に捧ぐ。








「…白蘭。」
「…」
「白蘭?」


 色を喪った花に何の価値があるのだろうと、かつて君は朝露を零すようにぽとりと一言呟いたことがあった。


「聞こえてる?白――…」
「ごめん正チャン。」


 逆光の彼の顔。
 部屋に漂う四季折々の花の香(か)。
 全てが手に入る虚しい部屋。


 彼はマフィアのボス。


「え?」
「…ごめん正チャン。」


 反芻する声は悄気(しょげ)た子どものようで、ああ、君はまだ大丈夫だと安堵する。


「俺は正チャンまで――」
「聞いて白蘭。」


 そこに善悪の判断は挟まない。
 何故なら自分はマフィアではないのだから。
「ボンゴレを、落とそう。」


 悪ならば全てこの身が引き受けるから。